ウェブトゥーン界の10年は、韓国の慣用句で「山川が変わった」という言葉に当てはまるほど多くのことが変りました。 2010年代は、ウェブトゥーンの産業規模が大きくなっただけでなく、IP拡張の新たな可能性を発見し確認した時期と言えます。わずか10年前の2009年に戻り、ウェブトゥーンを有料で販売し、ウェブトゥーン原作の映画やドラマが大成功してると言って信じる人はいないでしょう。激動の2010年代を前期・後期に分けて、WebtooninsightKoreaのレポートをお届けします。
◆ 2010年代振り返る:前半(2010-2015年)
https://www.webtooninsight.co.kr/Forum/Content/657

●2010 - 2011年:以前とは別の時代に。
2010年と2011年はウェブトゥーンの歴史に残る作品が数多く登場した年だ。ネイバーウェブトゥーンで連載を開始した作品としては2010年1月からチュホミンの「神と一緒に」、6月から「神の塔」、7月から「チーズインザトラップ>、2011年からは<ゴッド・オブ・ハイスクール>等の名作がある。最近連載を終了したガウス電子の「こんな英雄は嫌い」は2011年から連載を始めている。ダウムウェブトゥーンではHunが<シークレット・ミッション>が2010年7月から連載を開始し、ネオンピの<ダイヤから>が2011年2月から連載を開始している。

当時ウェブトゥーンプラットフォームはネイバー、ダウム、ヤフー、パラン等のポータルサイト系のウェブトゥーンプラットフォームと、SKで運営していた「トゥーン都市」等が代表的であった。「トゥーン都市」は有料ウェブトゥーンを販売した最初の事例でもある。イ・ヒョンセの「非情時空>、<レッドフェイタル>を有料に切り替える前に、無料で見られるようにする「待つと無料」方式を披露した。マーサウサギとシン君がコラボした「ツインルーム」もトゥーン都市で有料で先行公開されて無料で連載された。
この時期は、本格的にウェブトゥーンが販売される直前の時期であり、日常生活とギャグマンガ作品が中心のウェブトゥーンプラットフォームに本格的な作品が登場した時期でもある。また、当時の作家の話では、2010年までは一話当たり原稿料が8〜10万ウォンと低く、2011年から新人作家の原稿料が大きく上がったようだ。つまり、この時期からウェブトゥーン作家が生活できるレベルの原稿料を得られるようになったということだ。作家が増え、作品数が増え始めた時期がこの2011年と言えよう。
また、この時期は、まだ少数の作品だけが映像化されていたが、ウェブトゥーンの人気に対して、ウェブトゥーンの映像化のビジネスはうまくいかずにいた。しかし、2010年に「苔」が映画化され、340万人の観客を動員し、ウェブトゥーン原作映画初の300万人動員を突破した。
●2012-2013年:ウェブトゥーン借りて、ウェブトゥーン売ります。

2012年の話題は他でもない、放送通信審議委員会(以下、放審委)のウェブトゥーン規制だ。2012年1月7日、朝鮮日報は 「『熱血小学校』は、暴力漫画」という記事で、当時ヤフーに連載中のウェブトゥーン<熱血小学校>の暴力性を指摘、ウェブトゥーンが青少年に暴力を助長する主張を取っており、2日後の1月9日には、放審委が「ウェブトゥーン監視強化」の方針を明らかにした。続いて10日には、Yahooは、『熱血小学校』の連載を中断し、連載分も削除した。また、放審委は24個の作品を青少年有害媒体物に指定すると、事前の通知をして問題をさらに悪化させた。
『熱血小学校』の作家は「No Cut」キャンペーンを通じてウェブトゥーン下部に画像を挿入する一方、放審委の前で1人デモをしたりした。インターネットコミュニティでも放審委のウェブトゥーン規制方針に反発する読者が合流した。そして2012年3月末、放審委は一歩後退し、ウェブトゥーン界のニーズに対応してウェブトゥーンの自主規制案作り、自主規制体制の下で作品の評価を検討することにした。
このように複雑な2012年初を経て、ウェブトゥーン界では有料化モデルを導入し始めた。 2000年代のいくつかの試みがあったが、すべて失敗したウェブトゥーン有料化は、2010年「トゥーン都市」の試みにつながった。しかし、「トゥーン都市」ではサービス利用自体が不便で、当時の決済システムにも難があった。その後、トゥーン都市は2013年にサービスを終了した。
2012年7月、ダウムウェブトゥーンは、ポータルウェブトゥーンプラットフォーム初の完結ウェブトゥーンの有料化を導入した。連載作品は無料で鑑賞が可能だったが、有料になった後、一定期間が経過すると、有料でサービスする方式だ。ネイバーウェブトゥーンは、他の方法で作家の利益を多角化するPPS(Page Profit Sharing)方式を導入し、作品の下部に広告を挿入したりした。この時期、モバイルデバイスの普及が爆発的に増えた時期もあった。スマートフォンが普及し、ウェブトゥーンをPCで見ていたユーザーがスマートフォンを使用してウェブトゥーンを鑑賞し始めた。
そして2013年7月には、最初の有料ウェブトゥーン販売プラットフォームのレジンコミックスが始まった。レジンコミックスは発足当時PC版ではなく、モバイルアプリを先に発売し、その後9月にPCのWeb版を公開した。支払いはモバイル決済方式に加え、PC版では文化商品券決済が追加された。ウェブトゥーンを専門に扱って有料課金モデルを本格的に導入した最初の事例にもかかわらず、初期の主力作品だった<悪い上司>が1年だけで2億8千万ウォンの収益を上げ、Googleのプレイストアでは発売以来、12カ月連続で漫画分野1位、AppleのApp Storeでも10カ月連続の本部門の売上高1位を達成した。それだけでなく、オープン1年で新人作家200人余りがレジンコミックスを通じてデビューするなど、「レジンコミックス突風」といっても過言ではないほどウェブトゥーン系に大きな波紋を起こした。この時期を起点に、「ウェブトゥーンも販売することができる」は、市場の認識と同時に「ウェブトゥーンをお金を払って見る」ことが、読者に本格的に根付いた。
同時に、これまで苦戦を強いられなかったウェブトゥーン原作の映像が<シークレット・ミッション>の映画化で最初に695万人を動員し、500万人を突破した映画として記録され、ウェブトゥーン原作の作品が商業的に成功できることを証明した事例として、以来ウェブトゥーン原作作品のOSMUがウェブトゥーン界の話題になる。
●2014-2015年:プラットフォーム春秋戦国時代

2013年7月時点では、ダウムとネイバーウェブトゥーンに連載されている作品は、200以上の作品に満たなかった。 2019年11月28日時点ではネイバーウェブトゥーンに連載中の作品数は317作品になり、当時の二大プラットフォーム連載数合計よりも多い。このように作品が爆発的に増加した時期がまさにこの時期だ。レジンコミックスの成功で様々なプラットフォームが生まれ、最大時は35以上のプラットフォームが存在した。
プラットフォームが増えたことで、競って作家誘致し始めた。しかし、このようにデビューする作家は、ほとんど新人で、原稿料は140〜160万ウォンだった。 2015年レジンコミックスはMG(ミニマムギャランティー)200万ウォンを掲げ、これが業界標準のようになった。この時、初めて生まれたMG制度は作品の販売高とは別に支給される原稿料の概念とは異なり、作品の収益と連動され、作品がMG以下の売上高を出しても最低保証額を支給するシステムである。
MGシステムの評価は肯定的な側面と否定的側面の両方に存在する。肯定的な側面では、作家に少なくとも月に200万ウォンの収益を確保する制度が作家の労働、すなわち作品制作のためのコストをプラットフォームが支給せず、売上高の収益シェアだけを問うため、原稿料+利益シェア方式より作家の労働に対する対価が比較的保証されない側面もある。
2010年から連載を開始した<神の塔>を2年単位で9月2週目のカットをランダムにキャプチャしてみると、演出上の変化は2016年に顕著なるが、フォントなどは2014年から変化している。
プラットフォームが増え、モバイル・デバイスを通じたウェブトゥーン消費が本格化し、ウェブトゥーンの演出方法にも大きな変化が生じた。上の図は、モバイル・デバイス(iPhoneのX)で、2010年から2018年までの2年単位で<神の塔>の演出が変化した過程をキャプチャして表示した。 2014年になるとPCで読むことを念頭に置いた小さなフォントが太くなることを確認することができる。また、2014年にはネイバーウェブトゥーンが海外進出元年を宣言した年でもある。2014年は、世界で最初にスマートフォンの普及率はがPCの普及率を超え、PCを中心からモバイル中心へウェブトゥーンの重心が移動した時期が、まさにこの時期だ。
2000年代末、『心の声』、「小部屋幻想曲」など、初めて登場したチャドナム(冷たい都市の男) 、オムチナ(なんでもできる男)の要素が大衆的に流行し、インターネット文化に属していたウェブトゥーンが大衆文化に影響を与えるコンテンツとして定着した。2014年にドラマ化された<未生>は爆発的な人気を呼び、単行本販売記録を塗り替えるなど「チャングレ(主人公の名前)シンドローム」が起こった。本格的にウェブトゥーンを原作にした映像の契約が活発に起こった時期であり、以降ウェブトゥーン原作のドラマ、映画はどこでも見つけることができるようになった。
2010年代前期を整理すると、ウェブトゥーンの有料化、プラットフォーム群雄割拠の時代、スマホ普及、OSMU等にまとめることができる。本格的な産業化の軌道に上がる過程が急激に進むにつれて、ウェブトゥーン市場がダイナミックに変化した時期でもある。作家が増え、それによる問題が発生し始めた時期でもある。