WebtooninsightKOREAレポートより

2022年1月17日、NAVERウェブトゥーンは、BTSのHYBEと一緒に作った作品を一斉に公開しました。 Hive所属のBTS、ENHYPEN、TxTのウェブトゥーンをNAVERウェブトゥーンを通じて、それぞれ1月15日、16日、17日に公開しました。 作品タイトルはBTS『7FATES:CHAKHO』、ENHYPEN『DARK MOON:月の祭壇』、TxT『星を追う少年たち』です。

ところが、これらの作品、韓国の読者たちの反応が冷たく、『CHAKHO』は評点7点台、『星を追う少年たち』は8点台でした。唯一『DARK MOON』だけが9点台を記録しました(※一般的に9点は人気作、8点は及第点という評価)。先に公開されたウェブトゥーン形式のティーザーイベントでは、2点台の評点を記録しました。
連載開始になってから私たちの編集部には「何故こんな作品を出したのか?」という質問をよく受けました 当事者ではないので私共には正確にはわからないですが、過去の経緯を通じて、NAVERウェブトゥーン、BTS、HYPEがどのような戦略的な取り組みをしたのかについての説明はできそうです。
HYBEはその前身であるBig Hit Entertainment時代からBTSを筆頭に、アイドルを活用した事業に関心が高く、IPという言葉がほとんどなかった時代にすでに様々な試みをしています。試行錯誤を経て、BTSは初の成功事例を生み出します。それがBT21でした。

BT21は、「LINE FRIENDS CREATER」の最初のプロジェクトとして、BTSメンバーを基に作ったキャラクター商品を2017年10月に発売しました。その後LINE FRIENDSは、中国の歌手ワン·ウォンやITZYとコラボしました。最近はTreasure等とコラボしたTRUZが、世界で発売後1時間で完売するという記録を立てました。
こうした成功のスタート地点にはBTSがいます。BTSが成功から 他のグループもしたと言うべきでしょう。とにかく、BTSはこのようにNAVERと繋がり始めました。 BTSの成功とBT21が重なり、LINE FRIENDSの売上高も2017年の1267億ウォンから1年で55%も成長し、1,973億ウォンを達成します。この頃から、少なくとも対外的には本格的なHYBEとNAVERの協力が始まったと言って良いでしょう。
2014年、NAVERウェブトゥーンは、「海外進出元年」を宣言し、本格的なグローバル進出に取り組みました。まず米国に拠点を作り、4年経った2018年11月、NAVERウェブトゥーンの北米ホームページに1つ、告知が掲載されました。 それは「コインシステムの導入」のお知らせでした。 その一週間後の2018年11月29日から適用されました。
NAVERウェブトゥーンのグローバルサービスで、韓国のクッキーに該当する決済手段が登場したのがまさに「2018年11月29日」なのです。そのように登場したコインサービスは初期にはこれといった成果を出すことができません。当然です。元々無料で見ていたものを有料で決済しろと言われても、それがいくらであっても決済するわけがありません。しかし、どうしても見たいものがあればどうでしょうか?

2019年1月17日、BTSを題材にした『SAVE ME』が連載されました。有料決済が始まってから約1カ月しか経ってない時にでBTSを題材にした作品が公開されたんです。当時、HYBEであったBIG-HITとNAVERウェブトゥーンの子会社であるLICOが共同で制作した作品でした。2018年BTSは「FAKE LOVE」という音源(韓国では楽曲を音源と言います)で韓国歌手で初めてビルボードシングルチャートTOP 10を獲得するなど、グローバル人気が沸騰し始めた時期でした。「SAVE ME」はウェブではなく、アプリでのみ鑑賞できる作品なので、支払いはNAVERウェブトゥーンの北米アプリでのみ可能でした。
グローバル多言語同時公開、BTSのIPを活用したウェブトゥーン。当然決済したかったファンが団結した力を見せてくれます。しかし、やはりこの作品も韓国ではあまり反応が良くありませんでした。プロローグは評点が7.99、1~2話は8点台です。しかし、北米をはじめとするグローバルでは様子が異なりました。

未来アセット大宇社が推定した結果(上記のグラフ)では、まず、収益化を開始し、本格的に『SAVE ME』が公開された時点、つまり2019年1月が経過すると米国やその他の地域の収益が格段に上がりました。前月比(MoM)で見れば、最初から画面を突き抜けた初月を除いても急激な上昇を示しました。つまり、評点は別として、海外では大きな成功を導きました
2020年と2021年は、ウェブトゥーン系に戦略的投資、そして合併買収が非常に多い時期でした。NABERウェブトゥーンは、6千億ウォンを投じて世界最大のウェブ小説プラットフォーム「WATTPAD」を買収し、その後、「WATTPADwebtoonSTUDIO」を設立し、北米のIP拡張を目指します。それだけでなく、親企業のNAVERはCJと3千億ウォン台の株式交換をして血盟関係を構築し、NAVERウェブトゥーンはTVINGに持分投資を断行しました。その後、CJ-ENMは、北米コンテンツ制作会社のEndeavor contentを1兆ウォンで買収し、Paramountを持っているVIACOMと協力関係を構築しました。その翌日にはNAVERウェブトゥーンがCBS、Paramountと協力関係を構築したという話がニュースで報道されました。
この全ての絵を指しているのはグローバルです。CJが買収たEndeavor contentとTVINGが持ち込むCBSとParamountのコンテンツ、そしてNAVERのWATTPADwebtoonSTUDIOが制作することになるコンテンツ、それにHYBEが持っているIPまで…。いずれもグローバルを目指しています。 NAVERウェブトゥーンは、韓国ではなく、グローバルを相手に事業をするグローバルプラットフォームになったことを全世界に公表する必要があります。
そして2020年、コロナ19が蔓延し、OTTが爆発的なブームを迎えます。その主役は、ウェブトゥーン原作作品でした。2020年初、まず『梨泰院クラス』が大爆発し、年末には『スイートホーム』がNetflixで韓国オリジナル作品として初のグローバル1位を記録しました。その後、『驚異的な噂』、『D.P』、『地獄』、そして最新では『今、私たちの学校は』が成功します。この期間、NAVERはCJと3千億ウォン台と株式交換をしながら血盟を結び、以後、『ユミの細胞たち』や『内科パク院長』、『放課後戦争活動』等が本格的に映像化して公開されます。
一方、2021年初にはBTSのHYBEに計4,100億ウォンを投資し、NAVERが持っているV-LIVEとHYBEのファンSNSであるWEVERSEを統合する「WEVERSE株式会社」を設立します。 NAVERとHYBEが運命共同体を作ることになったわけです。そして2021年12月、BTSのVがドラマ『あの年、僕らは』のOST「クリスマスツリー」を歌って話題になりました。この曲は韓国ドラマのOSTとして初めてビルボードホット100に上りました。

ドラマ「その年、私たちは」はSBSの子会社であるスタジオSが企画し、NAVERウェブトゥーンの子会社であるスタジオNが制作したドラマです。ところで、ハンギョンチャル作家が描いたこの作品の10年前の話を取り上げた『その年の私たち』がドラマ公開1ヶ月前からNAVERウェブトゥーンで連載されていました。この過程でBTSのVがOSTを歌ったのは主演のチェ·ウシク俳優との親交のためだという記事が出ましたが、果たしてそれだけが理由だったのでしょうか。推測ではありますが、何か戦略的な理由もあったんじゃないかと思います。
そして現在。ここでNAVERウェブトゥーンの姿がもう一つ見えます。 2021年初、NAVERウェブトゥーンの投資を観察していた人なら、頭の上に「?」が浮かぶほどのニュースがありました。NAVERウェブトゥーンが「STUDIO AtoZ」という、当時創業2カ月の制作会社に400億ウォンという大金を投資したというニュースでした。STUDIO AtoZのことは誰も何も知りませんでした。

そして最近、STUDIO AtoZが採用広告を出します。その採用公告に『盗掘王』、『全知的読者視点』、『自分一人だけレベルアップ』、『テンパル』等、REDICE STUDIOやRED7(旧L7)のウェブトゥーン画像が掲載されています。 NAVERウェブトゥーンがSTUDIO AtoZを通じてREDICE STUDIOとRED7に400億ウォンを投資したのです。そしてそのREDICE STUDIOが、HYBEとNAVERウェブトゥーンで意欲的に準備した<CHAKHO>を制作します。ウェブトゥーンプラットフォームとグローバル配給はNAVERが、IPはHYBEが、製作はREDICE STUDIOが担当するチームが編成されたのです。

ようやくここで話は『CHAKHO』まで来ました。果たしてこの作品は韓国での評価のように失敗したのでしょうか。まず、「公開時間」から見てみましょう。通常、NAVERウェブトゥーンの新作は、韓国時間基準で午後10時に公開されます。そして4週間は10時30分、4週間が過ぎたら11時に公開されます。
ところが『CHAKHO』は1月15日午前9時に公開されましたね。午前9時に作品が公開されることは最近では見られません。ではなぜ午前9時に公開したんでしょうか?
『CHAKHO』が公開された「土曜日の午前9時」を、NAVERウェブトゥーンがサービス中の国の時間帯として見てみましょう。まず、米国西部のカリフォルニアは金曜日の午後4時、米国東部のニューヨークは金曜日の午後7時、 ジャカルタは土曜日午前7時、パリは土曜日午前1時。ベルリンは、パリと同時刻ですね。 ですから、韓国の土曜日午前9時は、NAVERウェブトゥーンがサービスされる国を基準に週末を埋め尽くすことのできる時間帯だったのです。
反面、他の作品のように夜10時にアップデートされたらどうだったでしょうか? ニューヨークは土曜日午前8時、カリフォルニアは土曜日午前5時、ジャカルタは土曜日午後8時、ベルリンとパリは土曜日午後2時です。ほとんどの国では土曜日の一部を無駄にしてしまうのです。さて、時間まで戦略的に公開された『CHAKHO』の結果はどうだったのでしょうか?

韓国時間で15日から17日9時まで、週末の間、『CHAKHO』は620万ビューを記録しました。星は9.9を記録しています。また、1月17日基準の「NEW&TRENDING」はもちろん全体ジャンル1位を記録しています。インスタ等のSNSでもNAVERウェブトゥーンの『CHAKHO』広報には「このような作品を発表してくれてありがとう」という海外のファンのコメントが相次いでいます。
どうしてこんなに韓国のファンと反応が違うのでしょうか。それは韓国の読者が「ブランドウェブトゥーン」のように、広報目的で作られる作品に慣れているからだと思います。 BTSを素材にした作品なら、韓国のウェブトゥーン読者にとっては「ブランドウェブトゥーン」と認知され、BTSを通じて広報するための目的だと考える癖があります。これは<『SAVE ME』でも同様に現れた現象で、時間の経過とともに回復することが期待されます。
さて、HYBEは『CHAKHO』を どういう目的で作ったんでしょうか? 答えは「世界観」にあります。現実のBTSではなく、『CHAKHO』の世界観の中のBTSを作ろうという試みなんです。これはSMエンターのガールズグループであるaespaも同様で、先ほどお話したBT21の事例でも同様です。BT21のキャラクターは宇宙旅行中に地球に不時着し、偶然にスターになることを決心したという背景を持っています。

↑COEXのKPOPスクエアに掲げられたBTSの広告。
これは、LINE FRIENDSがBT21のデビュー3周年を迎えてイベントを開催し、ファンもBT21のキャラクターをBTSと同一視しておりません。 このように「BT21」世界観を作り、IP多角化に成功した経験のあるNAVERとHYBEは、『CHAKHO』を通じて「BTS世界」を作ろうとしているようです。『CHAKHO』のOST「STAY ALIVE」が堂々とNAVERウェブトゥーンで初公開されるのは、これを強化する布石として読むことができます。正式な音源発売は2月11日ですが、NAVERウェブトゥーンでは2月5日に見れます。 海外の読者に「コイン購入」と「ウェブトゥーン鑑賞」が繋がるポイントを作り、最も高い障壁である「初めて購入」をBTSを活用して乗り越えられるというメリットもあります。
BTSの「防弾TV」ではなく、「7FATES: CHAKHO by HYBE」というYouTubeチャンネルを別に作って、メインチャンネルである「防弾TV」では現実にいたメンバーたちがどこかに移動します。1月1日に公開されたCOEXの屋外広告では、NAVERウェブトゥーンのロゴを通過し、ウェブトゥーンとして誕生する姿を見せたりもしました。「現実のBTSとウェブトゥーンに登場するBTSは別世界の存在」というメッセージは、あちこちで絶えず発信されています。BTSが登場する"捉虎"という別の世界観を作っているということ、これがまさに『CHAKHO』の核心です。
とにかく、韓国読者の反応と異なり、海外読者の反応は熱いです。NAVERウェブトゥーンは報道資料を通じ、『CHAKHO』のグローバル公開後、2日間で閲覧数が1500万を超えたとし、「過去最高」記録を更新したと発表しました。公開された時間帯から韓国をターゲットにしたものではないと見られる『CHAKHO』は、グローバルウェブトゥーン時代の幕開けとも言えます。そして徹底的に企画されたブロックバスター時代を知らせるIPプロジェクトです。 NAVERウェブトゥーンが提示した「スーパーキャスティング」は、IPを活用した「世界観をキャスティングする場」として活用されると思われます。