韓国コンテンツ振興院は「2022年ウェブトゥーン作家調査報告書」をまとめました。「2022年のWebtoon作家調査レポート」は、846名の作家を対象としています。回答したウェブトゥーン作家の約70%は女性で、平均年齢は33.7歳でした。
2022年の結果を総括すると、「スタジオの分業化の進展」や「アシスタント活用の増加」等が挙げられます。それだけ大型作品かや産業化が進展していることが想像できますが、その分、新たな問題も提議されます。
以下、詳細を説明していきます。

●作活動の主力分野については、①「テキストを除く全体描画」、②「作画(デッサン、線画)」、③「作画(彩色、下色、デッサン、線画)」、④「背景」に分割して調査した結果、対象者の47%は①「テキスト+描く」で、「ストーリーのみ」が20.1%、「作画のみ」が32.3%でした。描画の中では、「作画のみ」が15%と最も多く、次に「描画全体(8.5%)」、「彩色も含む」(7.0%)が続きました。創作活動方式は、①「単独制作」、②「アシスタント作家を含む単独制作」、③「CP会社所属」、④「他作家との共同作業」、⑤「アシスタント作家の仕事」の5つのカテゴリーで、①の単独制作は66.8%と最も多く、そのうちの約半数(31.7%)がアシスタント作家と協力している作家であり、16.2%がCP会社所属で作業しています。
→分業は進んでいますが、今でも半数近くはほとんどの作業を一人で行っている状況です。
●アシスタントとの契約書を結ぶ作家の割合は50.2%で、2020年の19.8%、2021年の29.6%から大幅に増加。アシスタント作家のほぼ全員(96.3%)が定額を支払われ、49.1%が原稿料またはMGを一定の割合で支払っています。
●既存のIPを活用したウェブトゥーンを連載する作家の割合も増加しています。昨年は21.7%から今年は34.0%に増加しています。特に、プラットフォームではなく、エージェンシーやスタジオと契約している作家は、最近デビューした作家であるほど、既存のIPのウェブトゥーン化に携わっている割合が高くなります。
●ウェブトゥーン作家の66.8%はプラットフォームと契約を行い、12.2%はエージェンシーまたはスタジオとの契約をしたいと思っています。しかし実際には、全回答者の45.3%がプラットフォームと直接契約を結び、43%がエージェンシーと、9.5%がスタジオと契約しています。昨年は58,2%がプラットフォームと契約し、39.2%が代理店やスタジオと契約していました。
→市場が拡大している中で、プラットフォームとの直接契約が減り、エージェンシーやスタジオに役割が移行している。

●契約形態に対する反応も昨年よりもきめ細かくなった。67.8%は著作権で保護されながら連載契約で作業しています。著作権を譲渡あるいは共同著作のカタチで作品毎に連載契約する作家は21.6%。両方を合わせると89.4%で、作品毎の連載契約に就く割合は過去3年間で増加を続けています。それ以外は、作家の16.7%は雇用契約でスタジオや他の会社に雇用され、8.6%は外部委託/売り切れ契約などの一時的な契約で働いており、3.8%は口頭契約で働いています。こうした不安定な契約形態が減少していることは、すなわち産業としての成長と定着が進んでいることを示しています。
●RSについて、作家RSが「40~50%」の作家が24.7%、「20~30%」が20.3%になっています。「収益分配率が低い」とは一概に言えません。これは、MGやRS等の収益率は低いが原稿料が高い契約を結んでいる可能性があるためです。契約方法の下でのRS収益に対する決済の経験の割合を見ると、回答者の少なくとも3分の2が契約下で収益分配を受けています。つまり多くの作家が収益分配を得ています。

●ウェブトゥーン作家の平均年間総収入は昨年から大幅に増加しています。昨年を通じて連載している作家の平均年間総収入は昨年の8121万5000ウォンから1億1870万ウォンに増加し、過去1年以内に連載した作家は5668万9000ウォンから8573万7000ウォンに増加した。しかし、5千万ウォン以下の作家も半数いるため、平均総収入を鑑みると、トップクラスの作家の収益が飛びぬけて高いことが想像できます。
●収入内訳はRSが64.8%で、次いでMG(53.3%)、海外流通(24.2%)となっています。原稿料は昨年の60.3%から今年は10.8%に大きく減少しました。これは、主な活動プラットフォームがNaverウェブトゥーンである著者の数が昨年の28.2%から今年の16.9%に減少したことによるものと思われます。

●こうした「収入増加」傾向に反して、制作活動中に遭遇する主な困難として、「経済的困難」が依然として挙げられています。月収が安定していないこと、作品完成後に次の作品が準備されるまで収入がないこと、助手費や各種付帯費用の負担が財政難の要因です。実際、作家の月間平均創作活動費(アシスタント料、機材・資材購入費、スタジオ費、食費などの生活費を含む)は平均130万3000ウォンです。
●過剰な創造的労働時間とそれに伴う健康状態の悪化は依然として問題です。今年の調査では、作家は1日平均10.5時間、週5.8日制作に費やしています。昨年の10.5時間5.9日とほぼ変わりません(改善されていない)。
●「仕事/休憩時間の不足」と「精神的および肉体的健康の悪さ」は依然として圧倒的な困難要因です。特に、ウェブトゥーンに特有な「コメントによる精神的な圧迫」が顕著です。虐待的なコメントを経験した作家の76.1%で、35.1%はコメントをまったく見なくなったと答えています。さらに、58.9%の作家は、自分の作品が違法な共有サイトに投稿された経験があります。違法アップロード問題は通報しても完全に解決することは難しいですが、文化体育省や著作権保護院等の関係機関や契約パートナー(プラットフォーム、CP企業)、漫画家協会等の関連・協力団体に通報することで制度に変化をもたらすことが役立つと思われます。
●ここまで、2022年ウェブトゥーン作家調査報告書の重要な内容をまとめてきました。このレポートの結論では、「ウェブトゥーン作家」の概念そのものを再定義する必要があることが示唆されています。一言で「ウェブトゥーン作家」と言うには、あまりに多様化しているということです。例えば、「アシスタント」は「アシスタントという職域の作家」という認識も必要であり、背景にいたっては、独自の技能職であるため、「背景作家」と呼ぶことは至極当然の成り行きと思われます。
●連載作品がかつてないほど増え、新たに放映されるウェブトゥーン原作のドラマのニュースが殺到する中、ウェブトゥーン界の成長とともに、ウェブトゥーン界の主役である作家の収入が大幅に増加していることは心強いことですが、労働量、労働時間、違法流通など、未解決の問題がまだ残っています。いや、問題は広がっていると認識すべきかもしれません。