※この1年間、韓国の公共交通機関を利用していると、ウェブトゥーンの広告が増えたと感じます。もちろんオフライン広告がなかったわけではありません。KAKAOページ、レジンコミックス、コミカ、BOOKCUBEなど様々なプラットフォームがバスや地下鉄等で広告を行っていました。ただ、最近のオフライン広告を見ていると、以前と変わったような点が目立ちます。
昨年、目立ってオフライン広告を使用したプラットフォームはNAVERウェブトゥーン、RIDI、BOMTOONです。まずNAVERウェブトゥーンを中心に見てみましょう

しわくちゃの白い紙にしっかりとした書体で書かれた『私の夫と結婚して』というフレーズ。
「私の夫ならすでに私と結婚しているということなのに、どうして結婚してほしいの?」、「ロゴも何も表示がないので、これは広告なの?」といった疑問を見る人に抱かせ、どこか恐怖を感じるような表現物。まさにNAVERウェブトゥーンのウェブ小説原作ウェブトゥーン『私の夫と結婚して』らしい広告です。
その後、正式な広告が掲載されましたが、ティーザー広告であった白い紙バージョンの広告がソーシャルメディアやコミュニティ等で話題になり、作品広報の役割を十分に果たしました。

『私の夫と結婚して』はNAVERウェブトゥーンが大掛かりなプロモーションを行った作品でした。ソウルの主要地域の随所に広告が大きくかかっただけでなく、マクチャンドラマ(※韓国ドラマにありがちなドロドロの愛憎劇などを中心に、ストーリーがジェットコースター並みに急展開していくドラマのこと)をパロディーしたショートアニメも作られ、タイでは(G)I-DLEのミンニが広告映像を撮ったりもしました。 NAVERウェブトゥーンが後押ししているという感じを受けたもう一つの作品は、『強化レベル99 木の棒』です。 「短時間で1位を達成した新作」という点を掲げ、アプリ内のプロモーションも非常に積極的な作品です。『強化レベル99 木の棒』もオフライン広告が行われました。最近の市内バスはバスの側面に大きく付く広告の他にも、バスの窓ガラスにステッカーで貼られる広告があります。バスのすべての窓ガラスにそれぞれ違うタイプの『強化レベル99 木の棒』の広告が貼られました。

NAVERウェブトゥーンのオフライン広告戦略が以前と変わった点は「ブランド広告ではなく作品広告」ということです。 今までウェブトゥーンプラットフォームがオフライン広告をする時は、プラットフォームの認知度を高め、集客することを目的としていました。もちろん作品広告も含まれ、「この作品を見ることができるプラットフォーム」が狙いですが、今のNAVERウェブトゥーンにはもうその必要はありません。認知度で見てもMAUで見ても国内でNAVERウェブトゥーンは堅固な1位の座を守っており、NAVERウェブトゥーンがウェブトゥーンの代名詞である現在、韓国に「NAVERウェブトゥーン」を知らない人はいませんので。
これは「ウェブトゥーン」という概念自体が多くの人にまだ馴染みのない米国でのNAVERウェブトゥーンのプロモーション方式と比較してみれば明確に現れます。米国ではNAVERウェブトゥーンのロゴ仮面をかぶって街を歩き回るなど、国内では全くやらない方式でウェブトゥーン、そしてNAVERウェブトゥーンというブランドを知らせることに力を注いでいます。また、ニューヨークの地下鉄等に行われたオフライン広告のキャッチコピーを見ると、特定の作品ではなくウェブトゥーン自体の長所を前面に出していることが明らかになります。「OOPS、9PM turned into 3AM again」(わお、9時だったのにもう3時)、「Scroll down for a throw down」(敵を追い出すためにスクロールを放せ)、「Your favorite platforms love us」(あなたの最愛のプラットフォームは私たちを愛す)」等です。一部のキャッチコピーは、漫画やウェブトゥーンをバカにしているという批判を受けたりもしました。

とにかくNAVERウェブトゥーンの立場で、今や国内では「NAVERウェブトゥーン」自体を広告する必要はあまりありません。重要なことは、NAVERウェブトゥーンに「こんな面白い作品がある」ということを知らせ、利用者のリテンションを維持、上昇させることです。特に初期のNAVERウェブトゥーンと比較すると、今はNAVERウェブトゥーンで連載される作品数があまりにも多くなったため、多くの人に受け入れられる特定作品を認知させることがさらに重要になりました。以前は「ブランドを知らせる」広報だったとすれば、今は「内容を知らせる」広報が主になったのです。いくらティーザーだったとしてもロゴさえつけていない『私の夫と結婚して』の広告を見れば、プラットフォームより作品を前面に出しても問題ないというNAVERウェブトゥーンの自信がうかがえます。
最近のNAVERウェブトゥーンのオフライン広告の様相が以前に比べてもうひとつ目立つ点は、映像広告です。一番代表的なのが昨年末を席巻した『財閥の末息子』です。
ドラマ「財閥の末息子」の原作は実はMUNPIAで連載された同名のウェブ小説ですが、ドラマを放送する前にNAVERウェブトゥーンにウェブ小説を原作としたウェブトゥーンもリリースしました。ドラマの放映開始を基点に、まだ10話も連載されていない完全新作ですが、オフライン広告を実施しました。NAVERウェブトゥーンではなくJTBC側で行ったとのことですが、『財閥の末息子』ドラマ放映前にソウルの森(ソウル東部の大きな公園)でポップアップストアが展開されもしました。ポップアップストア準備中には「順陽グループ(作中の社名)買い入れによる工事中」という垂れ幕がかかり作品内容に対する没入と好奇心を加えたりもしました。
NAVERウェブトゥーンで連載中の数百作品のうち、10話も連載されていない新作『財閥の末息子』がオフライン広告に展開されたのは、映像化作品の原作がライトユーザーを引き付けるのに適しているという判断からだったのでしょう。ウェブトゥーンマニアはすでに知っていてウェブトゥーンを見ているので、オフライン広告に引き込まなければならないのは「NAVERウェブトゥーンを知ってはいるがウェブトゥーンをそんなに熱心に見ない」クラスターです。彼らは映画やドラマなど他の既存のマスメディアに慣れているので、彼らを引き付けるために「映像化原作ウェブトゥーン」はこの上なく良いアイテムだったのです。
このようにNAVERウェブトゥーンが大々的にオフライン広告をするのは、ウェブトゥーンが特定集団だけが見るサブカルチャーではなく、大衆文化の仲間入りをしたということを見せたりもします。特に映画やドラマの原作のウェブトゥーンであれば、多くの人々に「ウェブトゥーンも大衆文化」と刻印させる役割も果たせます。

NAVERウェブトゥーンはオフライン広このように積極的に乗り出すことになりましたが、KAKAOはどうなのか、と疑問に思うかもしれません。KAKAOエンターテインメントでオフライン広告を全くしなかったわけではありません。去年地下鉄に「デビューできないと死ぬ病気にかかってしまいました」の誕生日広告をKAKAOエンターが展開したのですが。 この作品はアイドル物という特徴もあり、特殊事例に近いものです。
NAVERウェブトゥーンとKAKAOページのプラットフォームとしての特徴は異なります。NAVERウェブトゥーンは有料プレビューを提供しているが、基本的にはトラフィックが重点となる無料プラットフォームである反面、KAKAOページは作品を販売することが重点の有料プラットフォームです。 すなわちNAVERウェブトゥーンはより多くの利用者が訪問するほど無条件に利益であるのに比べ、KAKAOページは利用者がより多く購入したり、作品の客単価が高くなってこそ利益が残る構造です。 したがって、KAKAOページではNAVERウェブトゥーンほどオフライン広告に注力する理由はあまりありません。

KAKAOページは昨年下半期にリニューアルに踏み切り、3다무(3時間待てば無料)という課金モデルを開始しました。
KAKAOページを成長させた最高動力である「待てば無料」はもともと「3日に1つずつ無料」でした。ところが、これを「3時間毎に1話無料」に切り替えたのは、これ以上3日では利用者を捕まえておくことはできないと判断したのでしょう。実際、KAKAOページのMAUは減少傾向にあり、NAVERウェブトゥーンとの差も広がっています。このような点で、さらにKAKAOページはオフライン広告を通じて新しい利用者を模索するよりは、現在の利用者のリテンションを維持することがより急務ではないかと思います。